日本分析化学会会長

新しい社会における分析化学会を目指して

10月に、内山前会長の後を受けまして、歴史ある日本分析化学会の会長を仰せつかりました。前会長の残務期間ということで短期間ではありますが、設立70年近い本学会において初めての女性会長ということになり、重責に身が引き締まる思いでございます。

記憶に新しいことと思いますが2020年のノーベル化学賞は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術の発見によりJ. A. Doudna博士とE. Charpentier博士の2人の女性研究者が受賞しました。ノーベル賞の授賞者のうち女性は僅か3%であり、様々な化学系学会の調査においてもGender gapは改善されていないと言われています。特に日本は女性研究者の割合が諸外国と比べても低いことが知られています。本学会では、2013年に女性研究者ネットワークが設立され、年会や討論会の際に毎回セミナーを企画して活動しており、2015年にはAnal. Sci.誌で女性研究者の特集号 ”Cutting-Edge Analytical Chemistry Research by Women Scientists”が上梓され、2018年には新たに「女性Analyst賞」が設立されるなど、ダイバーシティ推進に力を入れてきました。今後も本学会では、女性研究者も含め、分析化学分野の若い研究者を応援する活動に注力し更なる活性化を図ります。

現在、COVID-19の世界的な感染拡大の影響で、社会・経済活動が大きく変化しております。2020年の第69年会は初めてのWeb開催となりましたが、大谷実行委員長、並びに実行委員の皆様の多大なるご尽力により盛会裏に終了しましたことは、本学会としても大きな財産になりました。未曽有の危機ではありますが、短期的な対応のみにとらわれず、わが国が世界から遅れているデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の好機ととらえ、科学を支える学会の1つとして積極的に情報発信していくことが重要と考えます。これまで本学会では、2018年、2019年の年会の産業界シンポジウムにおいて「AI,MI時代への期待と課題 I・II」を取り上げてきました。AIやビッグデータの活用が本格化している中で、IoTやマテリアルズ・インフォマティクス(MI)などの導入が進んでいます。シンポジウムでは、各企業のコンピュータサイエンスの取組み事例を紹介し,今後の活用,展開,課題について会員相互が議論する機会を設けました。今後も、発想の転換が必要であり、この機会をネガティブに捉えずに、例えば、研究設備や機器を遠隔操作などでも、さらに使い勝手が良いようにしていくことなども必要です。計測や分析機器といった業界では、DX推進を真剣に考えグローバルに展開する時代であり、そのためにはやはり人材の育成が重要であると思います。産官学が一堂に会して自由に議論し情報交換する交流の場として、学会を大いに活用して頂きたいと思っております。

現在、本学会は新しい時代に対応するため、出版の電子化をはじめ、運営方針や活動等の見直しを図り、次のステップへ向けて大きく舵を切る準備をしています。私自身は、中村会長、岡田会長、内山会長と3名の会長の下で副会長を務めてきました。前会長の企画を継承しながら、筆頭副会長、副会長、理事等の役員の方々、そして事務局職員の協力のもと、さらなる発展を目指して全力を尽くしたいと考えています。会員の皆様が楽しく活発に充実した研究活動を展開し、そして有意義に情報交換できる交流の場である学会となるように努力する所存でございますので、ご支援ご協力を賜りますようどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2020年11月30日

  慶應義塾大学薬学部  教授
(公社)日本分析化学会 会長
金澤秀子

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